2014年8月8日~12日まで、韓国昌原市にて第十二回アジア児童文学大会が開催されました。日本からは24名が参加しました。
アジア児童文学大会を順番に開催している日本、中国、台湾、および韓国各地域から多数の参加者があったほか、韓国で開催される本大会の伝統により世界児童文学大会として拡張された今回の大会では、カナダ、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、フィンランド、イタリア、インド、と広く世界の児童文学者が集まり、大規模な児童文学イベントとなりました。
<日本の発表者・タイトル一覧>
三宅興子「イギリスの子どもの本に描かれた東アジア諸国のイメージ」
佐藤宗子「1980年代以降日本の児童文学が描く現実――翻訳作品を参照軸として――」
さくまゆみこ「多文化共生のための一つの試み〜「アフリカ子どもの本プロジェクト」の活動について〜」
大竹聖美「近代韓国の童謡・童詩と現代の<詩の絵本>」
和田典子「三木露風の童謡観-「童謡は詩である」の意図と実作-」
成實朋子「東アジア「戦争児童文学」の可能性を考える―グードルン・パウセヴァング著『そこに僕らは居合わせた』を例に―」
鵜野祐介「松谷みよ子「龍の子太郎」が描いた<夢と希望>の幻像―ポスト3・11の児童文学研究―」
武藤清吾「芥川龍之介童話の「桃の花」表象」
<子どもたちに夢を与える文学>というメインテーマのもと、国際児童文学学会会長メイヴィス・ライマー(Mavis Reimer)氏による「カナダ児童青少年小説の中に描かれる家、その夢の形状化」の基調講演から始まり、日・中・韓・英の四カ国語で同時通訳された論文発表、五つの分科会に分かれたセミナーを中心に、各国研究者の充実した研究発表と自由な意見交換がなされました。
大会を取り仕切ったのは韓国児童文学学会および韓国児童文学研究センターでしたが、各分科会はその他の韓国の主要児童文学団体が主管する形をとり、まさに韓国児童文学関係者総出演のイベントとなりました。それぞれのテーマと主幹団体は次の通りです。
第一分科「童話が植える夢の種」韓国児童文学人協会、現代児童文学作家会
第二分科「童詩世界:子どもに夢を植えよう」韓国童詩文学会
第三分科「ユートピアとディストピア」韓国児童青少年文学学会
第四分科「子どもと文学の環」韓国児童文学研究会
第五分科「東洋と西洋の昔話の世界」韓国オリニ文学協議会
その他大会会場では、日中台韓の詩に韓国の画家が絵を寄せた「アジアの童詩画展」、昌原出身で韓国の代表的童謡詩人の李元寿とその妻崔順愛の詩をテーマとした「李元寿・崔順愛文学絵画展」、近代以降の韓国主要児童文学雑誌を見せる「写真で見る韓国児童文学100年史」、韓国の代表的児童文学作家を描いた「ドキュメンタリー画家キム・ソンニョン韓国童話作家人物展」(日本の丘修三氏も描かれていました)、参加者の著作が展示された「世界児童文学書籍展」が常設展示され大会参加者を楽しませました。一般市民に向けては「家族と一緒に童詩画大会(テーマ:故郷の春)」、「チェ・ミョンラン詩人のブックコンサート(童詩朗読と歌)」、「読書治療相談室(韓国読書治療学会からカウンセラー派遣)」、『かあさんまだかな』を描いた「キム・ドンソン講演会」も同時に開催され、研究者から一般読者まで幅広く参加できる盛りだくさんのイベントでした。
開催地の昌原市は、韓国の国民童謡『故郷の春』の詩人李元寿のふるさとであることから<児童文学の首都>をうたっています。そのため今回の大会では大会会場となった昌原コンベンションセンターだけでなく、市内各地の図書館でも人気作家による講座が一般市民に向けて同時開催されました。日本の丘修三氏の講演会も地元の図書館で大会スケジュールと並行して別途行われました。
<世界児童文学の夜>として準備されたレセプションでは、地元の子どもたちによる手作り楽器の合奏のほか、韓国昔話の英語ストーリーテリング、日本の「せっせっせ」とよく似た手遊び大会、アジアの参加者による合唱や独唱と、豪華な夕食と共に楽しい出し物で大変盛り上がりました。私たち日本からの参加者は全員でステージに上がり、「幸せなら手をたたこう」を日中韓国語で歌いました。続いて関谷忠氏による江戸風物(金魚、納豆、豆腐などの売り声)、最後に昌原市が背景となっている李元寿「故郷の春」を山花郁子氏がまずは日本語で独唱、続けて皆そろって韓国語で合唱しました。韓国の国民的童謡を日本人が韓国語で合唱したサプライズにホールからは喝采の声が上がりました。
三日目は、外国人参加者対象の韓国歴史文化探訪の小旅行がありました。新羅時代の歴史と文化を味わえる古都慶州では、世界文化遺産に指定されている仏国寺と大陵苑古墳公園・天馬塚に行き、郷土料理をいただきました。その後昌原市の文化施設(昌原海洋テーマパーク、軍艦博物館、ソーラータワー、昌原市立馬山博物館、昌原市立馬山文信美術館)をめぐり、韓国の歴史と文化を満喫した一日となりました。
最終日は、昌原市内の李元寿文学館訪問のほか釜山市内での書店や市場めぐりも楽しみ、日本からの参加者の皆さんは充実した思いを胸にそれぞれ帰国することができたと思います。
(以上)
*次回、第13回アジア児童文学大会は、2016年夏、台湾(台東大学)にて開催される予定です。詳細は、アジア児童文学日本センターHPにてご確認ください。
【期間】2014年8月8日(金)〜8月12日(火)
【場所】大韓民国昌原市コンベンションセンター
【主催】アジア児童文学学会韓国本部、韓国児童文学研究センター、韓国児童文学学会等
【後援】文化体育観光部、昌原、韓国文化芸術委員会、韓国国際交流財団、韓国研究財団
【テーマ】大主題:子どもたちに夢を与える文学
小主題:①自国の児童文学が描く現実
②夢と希望を与える児童文学
③東洋と西洋の児童文学の世界
④地球村(グローバル時代)の子どもたちが読む童詩(子どものための詩)
【内容とスケジュール】
①8/8(金):受付、歓迎レセプション
②8/9(土):開会式、講演・論文発表・ディスカッション
③8/10(日):講演・論文発表・ディスカッション
④8/11(月):昌原地域韓国文化体験(慶州観光も予定)
⑤8/12(火):朝食後、解散
【対象】韓国、北朝鮮、日本、中国、台湾、モンゴル、マレーシア、フィリピン、香港などアジア圏のほか欧米諸国の児童文学作家、研究者、編集者、関連活動家(20ヵ国300人)
【参加申込】日本からの参加希望者はアジア児童文学日本センターを通して申し込んでください。どなたでも参加できます。Eメール、FAX、郵便等でアジア児童文学日本センターまでお問い合わせください。
【参加費】海外からの参加費:600ドル(4泊5日の費用)、直接会場にてドルのみ受付(会場ホテルで円からドル、ウォンへ両替できます)
【展示図書提出】参加者は、各自の著書等を可能な限り大会に持参し、献本をお願いいたします。会場にて各国参加者の図書が展示されます。書籍は各自で持参し、会場受付にて献本してください。大会終了後は韓国児童文学研究センターに保管されます。
【アクセス】会場の昌原コンベンションセンターおよび、宿泊予定の昌原ホテルまでは、釜山からのアクセスが便利です。釜山の金海国際空港からはリムジンバスで50分、600円ほどで行くことができます。(市外バス、3番・鎮海方面バス、「昌原ホテル」下車)釜山までは、おもに、以下の二通りの方法があります。
飛行機(成田・羽田・関西空港など‐釜山・金海国際空港)
フェリー・ジェットフォイル(大阪・下関・博多‐釜山港)
*羽田出発の方は、センターでまとめてチケット手配する団体旅行が可能です。関空利用の方も、ご希望の方は釜山で羽田組と合流し貸し切りバスでホテルへ移動することが可能です。(個人での自由旅行も難しくありません。)